ここ最近アナログレコードが盛り上がっていますね。有名アーティストもCDや配信の他にレコードでのリリースを行っていたり、大手CDショップのHMVでもレコードショップをたて続けに出店していたり、「レコードの日」や「レコードストアデイ」などの限定リリース・再発盤の企画やイベントなどなど…レコードにまつわる物事が大きく注目されています。
このブログでも以前書きましたが、私も2~3年前から本格的にレコードで音楽を聴くようになりまして、私が使っている機材や、おすすめの機材について書かせて頂きました。
今回はこれからレコードを買おうとしてるけど、どこで買えば良いの?と困ってる人へ私がよく行くレコードショップを紹介しようと思います。
紹介する基準
お店を紹介するにあたって、紹介する基準は以下の3つです。
お手頃な値段
取扱うジャンルが幅広い
入りやすい
1の「お手頃な値段」は、中古レコード市場では希少価値の高いものや人気のものは、当たり前ですが自然と値段も高くなります。市場には”相場”というものが存在していて、それによってなんとなくの価格は決まっています。
なのでどこでも一緒じゃないの?と思われると思いますが、実店舗ですので渋谷の一等地にあるお店と、郊外の住宅地にあるお店、もちろん家賃が全然違いますよね?なので家賃などの固定費は商品の値段にダイレクトに跳ね返ってきます。または大手チェーン店のように販売網があるかどうかでも変わってきますし、お店によって力を入れているジャンル、そうでもないジャンルがなんとなくあるので、そこでも値段は変わってくると思います。
そんなところで、レコード買い始めたばかりでいきなりWeldon Irvineのオリジナルを買うのもどうかと思いますので、(まぁアリっちゃアリですけど…) 高額なレア盤ばかりのお店というよりも、全体的にお求めやすい価格設定をしていたり、定期的にセールをしているお店などをピックアップします。
2の「取り扱うジャンルが幅広い」ですが、例えば60年代のロックが大好きで、それをレコードで聴いてみたい!という方は、専門で扱っている店や、店主が60年代ロックに力を入れているお店に行けばOKなんですが、これからレコードを買いたいという方は「新たなジャンルを開拓したい。」「昔の音楽を知りたい。」という方が多いんではないでしょうか? かくいう私もそんな感じで聴き始めました。
そんな中でおすすめしたお店がゴリゴリのHIP HOP専門店だったら、HIP HOPだけでそこからの広がりは結構難しいですよね…。なので力を入れているジャンルはあるにせよ幅広いジャンルを取り扱っているお店の方が、好きなアーティストのルーツや関連するアーティストなど掘り下げていきやすいんではないでしょうか。それとジャケ買いも自分の音楽を広げる重要な要素なので、ジャンルが特定されていないほうが良いと思います。
最後の「入りやすい」はホント重要で、(笑) 若い時はドキドキしながら個人経営のレコ屋に入って、店主と自分しかいなくて、重たい空気に耐えられずに、見ていても何も頭に入ってこないこともありましたね…。まぁそれはそれで通過儀礼のようなものなんですが、大人になったので少し余裕を持って買いたいなーというのが希望です。
おそらく今の時代にそんな閉鎖的なレコ屋は少なくなっているんでしょうが、店内も明るくて、店員さんもそこまで愛想が悪くなくて、店主の仲間がいつ行ってもたむろしていないようなお店が良いかなと思います。(笑)
以上の基準で、知る人ぞ知るコアなお店というよりは”親しみやすさ”を重視しています。
1.Flash Disc Ranch (フラッシュディスクランチ)
東京で最も有名なレコードショップのひとつと言っても過言ではない「フラッシュ・ディスク・ランチ」(以下FDR)。レコードショップ激戦区の下北沢で82年創業の老舗です。FDR最大の特徴は、良質なレコードが破格の安さで買えることです。もちろんレアなものはそれなりの値段が付いているんですが、それでもオークションやしっかり査定するお店に比べたら全然安いです。
その中でも各ジャンルに「1枚800円・3枚で2000円」コーナーがあって、名盤と呼ばれているものや、オススメが入っているのでここのコーナーのものを買っておけば間違いはありません。他のお店では800円で買えないものもザクザク入っています。その他にも300円、100円コーナーもありますし、なんと!10円コーナーもあります。ジャンルはオールジャンルですが、レアグルーヴ、ソウル、ジャズが中心の印象。でもビートルズやストーンズの希少盤も結構出てくるみたいですね。
なぜこんなに安くできるかというと、オーナーさんの独自の仕入れルートや商品の回転率の高さに秘密があるようです。通常中古レコードショップは仕入れた商品を検盤、盤やジャケットを清掃・洗浄して値付け、ポップなどを書いて販売。ネット通販もあれば商品の撮影やアップロード作業があります。これだけ手間をかけてもなかなか利益を出せないようですが、FDRの場合はどうやら商売のルーツが「レコード輸入業」らしく、清掃も最低限でポップもほとんど書いていません。試聴機も置いていないですし、ネット通販は無く(グッズや小物は通販あり)実店舗の営業のみとなっています。その代わりレコードの回転は早く、いつ行っても新しいレコードがあるので常に鮮度が高い状態を保っています。普通のレコ屋は毎週行っても品揃えがそこまで変わりませんからね。FDRはいつでも新たな発見があり楽しめます。
それとオーナーの椿さんも有名な方で、昔音楽を紹介するラジオのパーソナリティをやっていたほど音楽への造詣が深いようです。椿さんに聞けばなんでも教えてくれるし、オススメしてくれるものにハズレがないのでポップや解説が必要ないんでしょう(と勝手に思ってる)。私も実際何度も行っていて、顔は認識されていないと思いますが、お会計の時は必ず話しかけてくれます。その人柄もあって国内・海外の有名なアーティストもお店を訪れています。(椿さんのInstagramで見ることが出来ます)
それと全部貯まると次回の買い物が半額になるポイントカードや、選挙の投票済み証明を持っていくと20%OFFになる”選挙割”などのセールを独自でやっています。それと私も愛用している「レコード洗浄液」これはマジでおすすめです。盤面の汚れがガッツリ落ちて古いレコードのプチプチノイズが激減します。
専用マイクロファイバー・クロス (クリーニング用・乾拭き用 各1枚入)
とりあえずレコードを買い始めたらまずFDRに行って、忙しそうじゃなかったらオススメ聞いて、洗浄液とオススメのレコードを沢山買うのが一番幸せになれると思います。
Flash Disc Ranch – Facebookページ
/// ここで買ったレコードから1曲 ///
2.Downtown Records (ダウンタウンレコード)
下町東陽町にあるその名の通りのレコードショップ「ダウンタウンレコード」(以下DTR)。ここはオーナーさんが東京の東側にレコ屋が少ない!ということで作った男気溢れるお店です。このブログの基地であるペントハウスもどちらかというと東側なので、よく行かせてもらってます。確かにレコ屋は渋谷・下北沢に多くて、都心部だと御茶ノ水や神保町、そこから東は本当に少ないんですよね。なのでその心意気に涙ちょちょぎれます。
DTRを象徴するものが壁面のズラーっと飾られたレコードのディスプレイです。大通りから一本入ったところにあるんですが、歩いているとこのディスプレイがとても目を引きます。そしてお店ではよくイラスト展やトークイベントなど様々なイベントを行っていて、ディスプレイはレコードだけではなくイベントに関連するものが飾られています。
お店は窓が大きく開放的な雰囲気で居心地が良いです。男気溢れると書きましたが、オーナーさんは朴訥でふわ~っとした印象です。(笑) ローテーブルとソファがあり、テーブルの上には試聴用のタンテが置いてあって、ソファに座りながら試聴することが出来ます。そして試聴しているとオーナーさん自らが淹れたコーヒーをサービスしてくれます。客層もゴリゴリにレコード掘りに来ましたっていう人よりは地元の家族連れなんかもいて、地域密着のお店なんだなぁと感じました。
レコードは基本オールジャンルで、最近流行っている和モノや歌謡曲なども置いています。古いソウルやラテンなどのジャケ付き日本盤シングルも結構見かけました。一枚一枚丁寧にポップが書いてあり、価格もお手頃です。以前行った時に”Joy Division”の「Unknown Pleasures」のUKオリジナルが5000円くらいで売られていて、これ安すぎませんか?と言ってしまったことがありました。たまたま持ち合わせがなくカードも使えなかったので、なんとなく買わなかったのですがもちろんすぐに売れちゃって、後でスゲー後悔しました…。
DTRもネット通販はなく実店舗のみの営業なのですが、お店のTwitterがありそこで入荷したレコードの画像をアップしているので、レアなものや探していたものも発見できるかもしれません。
晴れた休日の午後に行きたくなるレコードショップです。
/// ここで買ったレコードから1曲 ///
3.diskunion (ディスクユニオン)お茶の水ソウル・レアグルーヴ館
首都圏を中心に展開する大手中古レコード・CDショップチェーン「ディスクユニオン」です(以下ユニオン)。その中でもお茶の水にあるソウル・レアグルーヴ館と絞りましたが、ここはJazzTOKYOという世界最大級のJazz専門店が併設されていて(むしろソウル・レアグルーヴ館の方が併設されてる?)、フロアは同じです。正直必ずどちらも見るのですが、一応重点的に見る方はソウル・レアグルーヴ館なのでこちらを表記しました。
紹介の条件が「取扱うジャンルが幅広い」と言ったのに、ソウル・レアグルーヴ館って!って突っ込まれた方はお許しください…。お茶の水のユニオン全体を見ると色々な専門館があるので…(と苦しい言い訳をしてみる)。ちなみにお茶の水・神保町エリアには6店舗もの総合館・専門館があって、新宿エリアに次ぐ店舗数です。
ユニオンの最大の特徴が価格と品揃えですね。やはりチェーン店なので販売・買取のネットワークが構築されていて、定期的に行われる放出セールや廃盤セールはレアなものがザクザク出てきて、かつ個人店では付けられないような安い値段が付いているので、当日整理券が配られています。また年末や決算時期は「この色の札は40%off」とか破格のセールもやっています。私も今年の決算セールは3日間色んな店舗に通って結構な枚数ゲットしました。さらにユニオンのメンバーズに登録すると、ネットで各店舗の在庫が確認できる仕組みになっていて、中古商品が各店舗の在庫を確認できるって地味に凄いところですよね。チェーン店ならではのサービスだなと感心しました。
私はこのお店だとソウル・ファンクの7インチ(シングル)を買うことが多いです。品揃えも豊富ですし、1000円以下のものもかなりの数があるのでまとまった枚数買うことが多いです。それと米英以外のアジアやアフリカなどのファンクなど、変わったシングルもたまに発掘されるのでそういうのも狙って買ったりします。
なので色々なジャンルを聞いてみたいって人は、いきなりアルバムをジャケ買いするのもまぁアリなんですが、CDも同じようにシングルって良曲が多くてハズレが少ないので、まずはシングルから聴いてみて気になったアーティストのアルバムや関連するアーティストを掘り下げていくのも良いかもしれません。
このお店の唯一の難点が、JazzTOKYOとソウル・レアグルーヴ館はガラス1枚で隔てられてるだけなのに、会計が別々じゃないといけないのが煩わしいです。まぁ違うお店っていうことなんでしょうけど、このご時世なんとかなるでしょーそこは。
とにかく販売・買取ネットワークによる回転率の高さとセールの時の破壊力がヤバイです。
diskunion お茶の水 ソウル・レアグルーヴ館 – ブログ
/// ここで買ったレコードから1曲 ///
4.BALLROOM RECORD (ボールルームレコード)
渋谷・下北沢ほどではありませんが、HMV、ユニオン、レア、ココナッツディスクなどチェーン系のレコードショップが揃って店を構える吉祥寺。その中で少し駅から離れた住宅街に現れる、レトロでアメリカンなボウリング場を彷彿とさせる外観のお店が「ボールルームレコード」です(以下BRR)。
BRRの私が思う素晴らしいところは丁寧なポップ・解説です。これは本筋とは違うんですが、BRRはネット通販もやっており、そこに一枚一枚丁寧なポップと、試聴データが2~5曲ほどあります。僕は今だかつてこれほど欲しくなる、聴きたくなるポップを読んだことありません。やっつけでなんとなく書いた解説ではなく、へー聴いてみたいと思わせる内容で、聴いてみるとホントに良い曲なんですよね。これはバイイングの質なんでしょうか?センスが自分と合っているのでしょうか?とにかくグッとくるレコードばかりです。(もちろんお店に置いているレコードにも一枚一枚ポップが書いてあります)
じゃあネットで買えばいいじゃんと思ってしまうところですが、そんなことはなく実際のお店の雰囲気も良いですし、ネットと違い全体を通して俯瞰で見れるので、ネットで見たときには気にならなかったものも発掘されます。お店には有り難いことに試聴用のタンテも設置していて、通販ではできない検盤なども可能なので、そういうとこが実店舗の良いところですよね。
BRRも基本オールジャンルですが、カリビアン、ラテンなどのワールドや、ロックではニューウェイブ、ネオアコが中心で、イージーリスニングや和モノも充実している印象です。価格も全然手頃ですし、極端にレアで高額な商品はあまりなく、手が届く範囲の良盤が沢山置いているという感じですかね。
BRRはネット通販で気になるレコードを見つけて、試聴してから店舗の方に買いに行くというやり方もいいんじゃないでしょうか。遠方だったり、お店に行く時間がなければそのままネット通販で買ってしまってもいいですし。とにかくポップを読んでいるだけでも色んな知識が身につくし、関連するアーティストなども掘り下げられます。ここにオーナーさんのこだわりというか意思のようなものを感じて、見るたびに素晴らしいなぁと感じてしまいます。
レコードを売っているというよりは、”音楽そのもの”を売っているようなお店だと思います。
/// ここで買ったレコードから1曲 ///
5.JET SET TOKYO (ジェットセット トウキョウ)
最後は都内でも有数のオールジャンルでレコード新譜を取り扱う「ジェットセット トウキョウ」です(以下JET)。本店が京都で、東京店が下北沢にあります。JETの特徴は他の4店とは違い、中古ではなく新譜レコードを取り扱っているところです。アナログ需要の高まりや、アーティストの意向でレコードでのリリースは増えていますが、タワレコ、HMVなどの大手レコードショップ以外で新譜を手にできるのは他に多くないので、貴重な存在と言えるでしょう。
しかもJETの面白いところが、リリースされた新譜のレコード販売の他に制作事業部を持っていて、ライセンスを利用してCDやレコードの企画や制作も行っています。その他にも海外のアーティストやレーベルの代理店業務もやっているようで、海外のアーティストと日本の市場を繋ぐ橋渡し的存在にもなっています。実店舗の他にネット通販も行っていて、主な販路がネットのようなので実店舗はレコードショップというよりアンテナショップのような立ち位置みたいです。
新譜を取り扱っていますので、中古レコードを”掘る”というより、今までのダウンロードやCDを買う延長でレコードを手に取ることができます。現役で活動しているお気に入りのアーティストがいたら、限定でレコードのリリースなどの可能性もありますので、まずはJETをチェックするのが良いのではないでしょうか。最初の1枚目は現役のアーティストのレコードもアリじゃないですかね。
ショップには試聴用のレコードとタンテも設置していますので、中古じゃなくても試聴できます。私が行った時はたまたま試聴用のレコードがないものが欲しかったのですが、スタッフの方に「そこのiPadがネットに繋がってるんで、そこでYoutubeとかで探してもいいですよ」とフランクに対応してもらいました。(笑) そしてスタッフの方々はDJなどアーティスト活動と並行して働いている方が多いらしく、お話できれば現場の濃い音楽情報を得られるはずです。
レコードを買うだけではなく、最新の音楽情報にも触れられるお店です。
/// ここで買ったレコード///
+α
その他にも中古レコードが売っている所って結構ありますよね。今やディガーの聖地になっているHARD-OFFもそうですし、リサイクルショップにもちょろっと置いてあったりで、流行りの和モノを狙ったディガーも多いんじゃないでしょうか?そこで、レコ屋ではないんですけど、おっ!って思ったお店も紹介します。
ハードオフなんですが、都内にあまり無くて郊外の大型店のほうが品揃えも良かったりしますよね。ただ都心も都心の秋葉原にも小さいハードオフがありまして、レコードもすごい少量置いています。私が行ったときにはガレスピーなどジャズの古い60年代の盤も置いてあったので、タイミングが合えば希少なものもあるかも?
京王線の仙川駅は猿田彦珈琲があったり、安藤忠雄建築のマンション群があったりと密かに盛り上がってる街のひとつです。そこに「文紀堂書店」という小さな古本屋さんがあるんですが、これまた少ないながらもちょっとだけジャズなどのレコードが置いてあります。そこで発掘したのが、スタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」のサントラUK盤です。破格の500円で売ってました。(笑)もともとキューブリック作品が好きなので当然ゲットしました。古いデザインのディスプレイ用のプレーヤーが置いてあって、試聴することも可能です。(たまたまだったかもしれませんので、実際試聴する場合は確認取って下さい)
まとめ
またまた長編になってしまいましたが…いかがだったでしょうか?私もレコード買い始めた時はどこで買えばいいかわからなかったし、どこで買っても変わらないんじゃないか?と思うこともありましたが、レコードショップに通うようになってから本当にお店ごとの個性がしっかりあるんだなぁと驚きました。
もちろん通販で買うのも全然アリだと思いますが、せっかくダウンロードやストリーミングの時代にあえてアナログレコードを買おうとするのであれば、お店に出向いてお店ごとに醸し出す個性に触れてみるのも良いのではないでしょうか?これからレコードを買おうと思ってる方々の参考になっているかわかりませんが、この記事以外にもネット上にはレコードショップの情報は沢山ありますので、それらを元に記念すべき1枚を探してみて下さい。
その行為こそが“レコード的音楽体験”なんだと私は思います。
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