お久しぶりの更新でございます!
InstagramとTwitterは更新してるけど、ブログはやめちゃったのかな?と思われても仕方がないほど滞っていましたが、一応まだ続けています!しかもずーっと植物関連の記事が続いていましたが、今回はレアンドロ・エルリッヒ以来、久々のアートの話題です。
記事にはしていませんが、なんやかんや気になった美術館や展覧会などは行っていまして、今回向かった先は、初台にある東京オペラシティアートギャラリーで開催の現代アート作家トム・サックス(Tom Sachs)「ティーセレモニー」展です。
エルリッヒ展と同様に会場内の作品は撮影OKで、いくつか撮影してきたので写真を見ながら紹介していけたらと思います。それにしても最近はギャラリーや美術館でも撮影OKの展覧会増えましたよね。
トム・サックスとは
ニューヨークを拠点に活動しているトム・サックス(1966年、ニューヨーク生まれ)は 、 モダニズムやデザインのアイコンから着想を得た作品で知られるアーティストです。サックスはトム・サックススタジオならではの簡素な素材を用いながら、半実用的な立体作品が組み込まれたパラレルワールドを作り上げています。そして、彼や彼のスタジオアシスタントにより、「Nutsy’s」(2001-03年)や「Space Program」(2007、2012、2016-17年)といったインタラクティブなプロジェクトにも展開されています。
サックスの作品は、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、J・ポール・ゲティ美術館、ポンピドゥー・センター、サンフランシスコ近代美術館、アストルップ・ファーンリ現代美術館など、世界の数多くの美術館に永久収蔵されています。
主な個展開催場所に、ナッシャー彫刻センター(ダラス、2017-18年)、イエルパ・ブエナ芸術センター(サンフランシスコ、2016-17年)、ノグチ美術館(ニューヨーク、2016年)、ブルックリン美術館(ニューヨーク、2016年)、ザ・コンテンポラリー・オースティン(テキサス、2015年)、パーク・アベニュー・アーモリー(ニューヨーク、2012年)、オルドリッチ現代美術館(コネチカット、2009年)、ガゴシアン・ギャラリー(ロサンゼルス、2007年)、リーバ・ハウス(ニューヨーク、2008年)、プラダ財団(ミラノ、2006年)、ドイツ・グッゲンハイム美術館(ベルリン、2003年)、Bohen Foundation(ニューヨーク、2002年)、サイト・サンタフェ(1999年)などがあります。2016年の映像作品「A Space Program」(ツァイスガイスト・フィルムズにより公開)では、トム・サックススタジオの活動や哲学の一端と、2012年にニューヨークのパーク・アベニュー・アーモリーで開催した「A Space Program」プロジェクト(協力: Creativ Time *ニューヨークのアートNPO)にまつわる物語を紹介しています。
トム・サックスは「手作り(ハンドメイド)の既成品(レディメイド)」のアーティストと言われており、代表的なものはペーパークラフトで作った”エルメス“のロゴ入りのマックのバリューセットや”シャネル“のロゴ入りのトイレ、身近な廃材や中古の機材などを組み合わせて作られた”NASA“の管制室や、アポロ計画の月面探査艇など。
常にテーマの根底に流れるのは行き過ぎた「資本主義」や「人類の進歩」を考え直すこと。超高級なもの、超ハイテクなものへ対比として廃材や紙など身近で不要になったマテリアルを使い作品を作っているアーティストです。
実際行ってみた
さて先述した通り、いざ初台にある東京オペラシティアートギャラリーへ。オペラシティで覚えているのは2004年に開催された”ヴォルフガング・ティルマンス展“以来…かな?
2004年って15年前… いやいや!そんな訳ない!
(公式サイト今見たらフラッシュ使ってた…時代だなぁ。)
その間何かの展覧会行ってるとは思うんですが、全然記憶が無い…。まぁとにかくオペラシティは久しぶりでしたね。
まずは入ってすぐに、この写真ではちょっと見切れていますが、シアタールームがありまして、そこで10分ほどのムービーを観る事ができます。
実はこのティーセレモニー展は、2016年にアメリカ・ニューヨークにある「イサム・ノグチ美術館」で同名の展覧会が開催され、テーマが”ティーセレモニー“(茶道)ですから、トム・サックスもいつかは日本で行いたいと熱望していて、今回晴れて開催される運びとなったようです。
そもそも今回のテーマである”茶道“はイサムノグチの「古い伝統の真の発展を目指す」という姿勢から着想を得て、トム・サックスなりの解釈で作品を作り上げていったとのこと。
あ、話は戻って、そのムービーというのが、ノグチ美術館の当時の展示風景や実際トム自身が客人を招いてのお茶会の様子など、イントロデュース的なものになっています。3年前だし、この動画Youtubeにアップされてないかな…?なんて思ってたら、やっぱりありました。全くそのままの動画です。
放映中は中に入れなくて、次回上映が中途半端な時間だったので一旦展覧会を鑑賞した後に観ることに。
展覧会は「THEATER」「CORRIDOR」「OUTER GARDEN」「INNER GARDEN」「HISTORICAL TEA ROOM」のセクションに分かれていて、THEATERの後はCORRIDOR(コリドー)。
CORRIDORは茶道の「腰掛(休憩所)」のこと。ベンチがあって、履物が沢山並んだロッカーがあるが、どれもナイキのシューズを改造して作った草履?雪駄?のようなもの。
写真を撮りたかったのだが、実はこの日たまたまトムに茶道を教えたジョニー・フォグさんのデモンストレーションがあり、CORRIDORはそ見学の人で溢れていて写真は撮影できず…なのでそのままHISTORICAL TEA ROOMへ。
HISTORICAL TEA ROOMは今までトムが制作してきた茶道具が並んでいます。
上の写真の作品は茶道に着想を得て、初めて作った作品《First Tea on Mars》。はじめはebayで買った茶碗にNASAの文字を入れたらしいが、本人曰く失敗作で、ここからあたかも手びねりで作った茶碗(風のもの)が出来てきます。
《Large Chawan Cabinet》には茶碗が沢山並べてあります。おそらくなんですが、上から古い順になっているようで、だんだんサイズや作り方が変わっている(と思います)。
よく見ると”金継ぎ“風の茶碗も。
こちらは展覧会メインビジュアルの作品《Kabuto》。
《Shoburo》
作品をよくよく見るとヤカンの下に魔法陣的なものが書いてあったり、PEZがあったり色んな発見が。
それでは次はOUTER GARDENへ。
OUTER GARDENは茶室に続く”外路地“に当たる場所。この門をくぐって入ります。
中には様々な作品が並んでいますが、お!っと目を引くのが人工の池。中には本物の鯉がのんびり泳いでいます。
そしてOUTER GARDENから、塀の向こうは茶室があるINNER GARDEN。よーく見ると、門の右に紐で縛った石のようなものわかりますか?
これは日本庭園などで用いられる”止め石”。「これ以上進めませんよ」という立ち入り禁止を示す役割の石です。動画の中にも出てきましたよね。皆さん素通りしていましたが、わかっている人が見ると、こんなものまで!とテンション上がっちゃうでしょう。これも紙で作られているようで、本当芸が細かい。
さて門をくぐるとINNER GARDENです。真ん中にどーんと《Bonsai》があり、その奥に今回の展示のシンボル茶室《Tea House》があります。
盆栽は、幹の部分を紙管を組み合わせて作っていて、(おそらく)松の葉は綿棒で作っています。でもそれらしく見えるから不思議…。
茶室には掛け軸が掛かっていて、松尾芭蕉とかかな?と思ったらなんとモハメド・アリ。笑
アリの名言「It’s not bragging if you back it up (実力さえあればそれは自慢ではない)」の文字もしっかり刻まれています。
茶室の裏手へ回ってみると、ここは茶室の”水屋“に当たるスペース。水屋とは水道があって、お点前の準備や支度をする場所のことを言います。なので様々な道具が並べられていますね。動画にも登場し、今回のデモンストレーションでも話題になった、マキタの電動回転茶筅もあります。笑
よく見ると、今回トムが行ったデモンストレーションの工程表が貼ってありました。
そしてINNER GARDENを抜けると、展示室がグルっと一周できるように配置されていて、CORRIDORへ再び戻ってくるような動線になっています。
その間にも掛け軸(的なもの)が展示してあり、謎の漫画のキャラみたいな絵に
「長寿と繁栄を。」
の文字。絵の服装も全然日本っぽくないし。なんだコレ。笑
他にもマクドナルドのロゴと星条旗の掛け軸。(でもこれはちょっと欲しい。)
まとめ
さていかがだったでしょうか?
個人的な感想で、まず最初に感じたことが、
これが仕事って、なんて羨ましいんだ!
「こんなことでお金をもらえるなんて羨ましい。」っていう意味ではなく、単純にこれを作っている時すごく楽しかったんだろうなというのがビンビンに伝わってきました。私自身DIY好きですし、自分の好きなものを妄想しながら、手の届く範囲のもので作っていくって、まさに子供の時にやった遊びそのもの。それの最上級を見せられた気分になりました。
それに身近なもので世界観を表現するって想像する以上にセンスが問われると思うんですよね。もちろん素材や色彩、デザインなど作品そのものにセンスを感じられるか。それと同時に、今回の展示は下手すると茶道、ひいては日本の文化を揶揄していると捉えられてもおかしくないのに、しっかり根底にある茶道へのリスペクトも感じることが出来ました。この辺りの丁度良いバランス感と言いますか、それこそセンスが良いんでしょうね。
このプロジェクトの始まりが2012年で、トム自身が、これまで長い間茶道の作法や、日本文化の精神性を勉強してきたようです。先程の”止め石”なども良い例で、勉強してきていないと気づかないような所もちゃんと表現の対象になっています。
ここまで色々と書いてきましたが、それを全て抜きにしても作品自体ポップで可愛らしく、ユーモアがあって見ていて飽きません。紹介が遅くて恐縮なんですが、展覧会は今月23日(日)まで。興味のある方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
<トム・サックス : ティー・セレモニー公式サイト>