「ARTS AND CRAFTS」とかなんかかっこよく言ってますが、私は美術や工芸が好きで年間結構な数の展示に行くんですが、美術館やギャラリー、博物館、資料館など、気になる展示があるとジャンルを問わずフラッと覗きに行きます。
そのARTS AND CRAFTSシリーズの記念すべき第1回目は「畠中光享コレクション インドに咲く染と織の華」@松涛美術館 です。
展示概要
1498年のバスコ・ダ・ガマのインド航路発見以後、頻繁な交易を通じて世界に輸出されたインド染織品は、世界の人々を魅了しました。日本にも近世初期に、木綿布に手描きや型で文様を染めたいわゆる「更紗」が輸入され、茶の湯では包裂や敷布として珍重されました。当時の日本は木綿布を色鮮やかに染色する技法を持たなかったため、舶載のインド染織品は、人々を魅了したことでしょう。本展では、日本画家、畠中光享氏のインド染織コレクションから約150件を選び、制作当初の姿である「布」という広い画面でみることによりその魅力を紹介します。また、同氏コレクションのインド細密画の優品も併せて展観します。
出典: 松涛美術館HP
要するに18〜19世紀のインドでは染色や織り、刺繍の加工技術が高くて美しい布がたくさん作られていました。畠中光享さんという方が集めたコレクションの中から150点展示しましたということです。ところで”畠中光享”さんとは誰なんでしょうか?
畠中 光享(はたなか こうきょう、1947年3月7日- )は、奈良県出身の日本画家。
1947年(昭和22年)、奈良県に生まれる。
1970年(昭和45年)、大谷大学文学部史学科を卒業後、京都市立芸術大学専攻科修了。
1971年、パンリアル展(パンリアル美術協会)出品(81年退会)。以後、
1973年、山種美術館賞展(1975年、1977年、1989年)を始め多くの絵画展に出品。
1977年、シェル美術賞、1978年、第1回東京セントラル美術館日本画大賞展大賞を始め受賞歴多数。
インドから日本にいたる仏教の展開に造詣が深く、作品もインドの風俗や仏伝(ブッダ釈尊の伝記および思想)をはじめ、仏教を題材にしたものが多い。また、インドの細密画や染織品のコレクターとしても知られる。歴史的な作品の研究を通じてテーマを見出し、絵画制作をもって絵の本質と生き方を考えることを制作の信条とする。
2006年4月現在、無所属。京都造形芸術大学教授。
出典: Wikipedia
畠中さんは日本画家なんですね。仏教やインドに関係した作品が多いようです。
それでは概要はなんとなく掴んだ(?)ところで、実際の展覧会のレポートです。
実際に行ってみました
8月末のとても天気のいい日の午後、渋谷駅から松濤美術館まで歩いて行きました。東急文化村を横目にだいたい徒歩で15分くらいですかね。最寄り駅だと渋谷より井の頭線の神泉駅の方が近いです。
東京を代表する高級住宅街”松濤”にある美術館です。展覧会に結構行くって言う割に実は松濤美術館は初めて行きました。(たぶん…若い頃に一度行ったような気もするが最近記憶がバグってるので自信が無い) 渋谷から松濤に続く通りと山手通りがぶつかる少し手前を曲がるといきなり現れます。本当住宅街に急にドォーンと出てくる感じ。
レンガ作りで重厚な雰囲気。入り口もポツンと一箇所しかなく、美術館というより教会のような印象
展示の看板。意外と会期は長め
入ってすぐ右手に入場券売り場があるんですが、そこの係の人がまぁー上品なマダムで、こういう人が本当に品格のある人っていうんだろうなと思いました。途中のタリーズでコーヒーを買って飲みながら行ったんですが、飲み終わったのを捨てようとゴミ箱探してたら、捨てましょうか?ってイヤミな感じゼロの笑顔でわざわざ捨ててくれました。さすがポッシュな街ですね。
展示構成
展示は6つの章に別れて構成されています。
- 第1章 手描き、木版捺染
- 第2章 印金、印銀
- 第3章 銅板捺染
- 第4章 絞
- 第5章 織
- 第6章 刺繍
順路はまず地下から始まって2階に進む感じですが、地下展示室が”第1〜3章”で2階展示室が”第4〜6章”となっているようでした。
それでまず地下に行くといきなりドーンと目に飛び込んでくるのが、高い天井から垂れ下がる無数の布!実はこれ全部インド人が頭に巻くターバンなんです。
高い天井から無数のターバン。この高さでさらに下で巻いていたので、ターバンってこんなに長いんだ!と初めて知りました
アップ。裏が透けるほど薄くてカラフル
なんとなくターバンって地味な色で無地の印象ありましたけど、こんなにカラフルなんだなぁと改めて驚き。古いものなのに色もすごい鮮やかでした。その他にも今で言うシルクスクリーンのような木版捺染でプリントされた生地や、金の箔プリントや六角形のキルト生地など18〜19世紀の200〜300年前とは思えないクオリティでした。この生地この前インドで買ってきたんだって言われてもわからないくらい。インドにはこんな大昔から高い加工技術があったんですね。
展覧会のメインビジュアルにもなっているプリント生地。ポップでカワイイ!
ここまできて気づいたかもしれませんが、そう。この展示撮影が自由なんです。しかも個人の利用目的であればSNSやブログなどにアップも可能なんです。畠山さんのご厚意らしいのですが、展示の最初にこのようなアナウンスが掲げられています。素晴らしい!
地下の展示を見終わると次は2階です。(エレベーターあります) 2階の展示室は地下と変わって落ち着いた雰囲気。中央にめちゃ大きい高そうなソファがあって、腰を降ろしながら観ることができます。(ちなみに館内で使われているスツールはミースのバルセロナチェア オットマンでした)
大きなソファ。週末でしたが来場者は20〜30人くらいでした
2階は第3〜6章の織りや刺繍がメインの展示ですが、生地の他にも版木なども展示していました。
ポップな色使い。よーく見ると生地全体に”刺し子”がされていて、独特な風合いになっています。気が遠くなりそう…
この織り柄もカワイイ。鳥の首が交互に交差してる。なんか間抜けで好き
まとめ
展示されていた生地は本当に貴重な物なんでしょうが、柄の色使いがポップだし、デザインも現代でもありそうな可愛いものが多いので、もしかしてオカダヤとかに行けばありそうだなーと不謹慎ながら思ってしまいました。
そんな錯覚に陥るほど大昔からある技術やデザインが現代にも脈々と受け継がれていて、それが多くの人たちに受け入れられている証拠なんだろうと感じました。
松濤美術館は(たぶん)初めて行きましたが、美術館自体がコンパクトなので1時間もあれば全ての展示をじっくり観る事ができるでしょう。渋谷区立の美術館ということもあって、入場料も大人¥500と安いですし、休日に行ってもそこまで混み合う事もなさそうなので、散歩がてら立ち寄ってみるのもいいかと思います。
帰りは松濤近辺をブラブラしながら帰ったんですが、どの家もハンパじゃないっス…。