本作はジャズオルガニスト/キーボーディストCharls Earlamd(チャールズ・アーランド)72年発売10作目のアルバム「Intensity」。
レアグルーヴ界隈だと74年のアルバム「Leaving This Planet」が有名。愛機ハモンドから電子楽器黎明期のARPのシンセサイザーに移行し、アルバムの世界観が”宇宙”という壮大過ぎるテーマから、もう常人には理解しがたい域まで達し、スペーシージャズ・ファンクなどと呼ばれ、マニアに珍重されているアルバムだ。
そこから遡ること2年。このIntensityはアーランドのファンキーで熱いプレイはそのままに、ドラムにはBilly Cobham(ビリー・コブハム)を迎え、「Leaving This Planet」の布石となるような極上のジャズファンクを聴かせてくれている。
聴きどころは、まずA-1の”Happy ‘Cause I’m Goin’ Home“だ。Cicago(Robert Lamm/ロバート・ラム)のカバーで、序盤はバッキングでフルートやサックスのソロを引き立たせているが、終盤はアーランドも負けじとハモンドの鍵盤を叩きまくっている。まさに熱く男気溢れるジャズファンク。
そして動画の曲でもあるA-2の”Will You Still Love Me Tomorrow“だ。この曲はCalorie King(キャロル・キング)作曲で(作詞は元パートナーのジェリー・ゴフィン)、1960年に4人組女性ボーカルグループのThe Shirells(シュレルズ)が歌った曲である。翌61年にリリースし、全米1位、全英4位にもなった名曲だ。
私はこの曲を初めて聴いたのはオリジナルではなくAmy Winehouse(エイミー・ワインハウス)のカバーだった。
アーランドとは対称的にギター一本で歌い上げるエイミーの歌声は本当に素晴らしい…。この時代を超えた名曲はエイミーに限らず数々のアーティストにカバーされている。作曲者本人のキャロル・キングはそこから約10年後に代表作のアルバム「Tapestry (つづれおり)」で披露している。
一方アーランドが奏でるWill You Still Love Me Tomorrowは、序盤はビックバンドのようなホーンに始まり、主メロをまさにシンガーが歌うようにしっとりと弾いているが、中盤からは徐々に激しさを増し、それに呼応するようにコブハムのドラムにも熱が入る。
あまりにもエモーショナルで生生しいセッションは録音ということを忘れてライブ盤を聴いていると錯覚するほどだ。
終盤は主メロに戻り一旦落ち着くも、そこからまたホーンが加わりさらにダイナミックになっていき、そのまま最後はフェードアウト。
オリジナルはカントリー・ウェスタンな曲調であるが、アーランドのアレンジは曲調だけを”ジャズ風”にしたものとは全く違い、まさしく大迫力のジャズそのものになっている。
全編通してアーランドの熱いプレイは、スピーカーの前で思わず正座して聴いてしまうほど素晴らしく、輝いている。
DISC INFO
Song : A-2 / Will You Still Love Me Tomorrow
Album : Intensity
Artist : Charles Earland
Year : 1972
Label : Prestige – PRT 10041 (PR10041)
Country : US
Discogs : https://www.discogs.com/ja/Charles-Earland-Intensity/release/6910004