AFRO,

Primpin – Salif Keita

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今回紹介するのはSalif keita(サリフ・ケイタ)の”Primpin“だ。こちらは1989年に発表されたアルバム「KO-YAN」からの12インチシングルカットとなる。

サリフは現在御年69歳で、実は去年の年末、6年ぶりにアルバムを発表したばかりの現役バリバリのミュージシャンだ。(私の好きなジョアン・ボスコジョイスも同世代だが、彼らも精力的に活動している。この世代のミュージシャンのバイタリティーにはいつも舌を巻く)


そんな大御所でアフリカを代表するヴォーカリストのサリフだが、生まれは西アフリカのマリ共和国。しかもなんと古代マリ帝国王家の直系子孫として貴族の家に生まれる。しかしこちらのPVを観て気づいた方もいるかも知れないが、アフリカンなのに肌が白い。サリフは先天的に肌や髪が白い”アルビノ“なのだ。

周りとは違う見た目で生まれてきたため、裕福な家庭にもかかわらず一族からは差別を受け、貧しい生活を送っていたという。しかし若い頃から音楽の才能に長けていたサリフは、1970年にマリを代表する「レイル バンド」にヴォーカリストとして加入、87年にソロになってからアフロ・ポップの名作「SORO」を発表する。

ちなみにマリやギニアなど西アフリカ一帯にマンディング(マンデ)という文化圏があり、マンディングにはグリオと呼ばれる演奏者が存在している。彼らは伝統楽器コランゴニを演奏するのだが、ただ演奏するだけではなく、文字を持たない時代から歴史の物語や遠方の情報、生活する上での教訓などを音楽に乗せて伝えていたという。

そのマンディングの伝統音楽と現代的な要素を融合させた音楽のことを”マンデポップ“と呼ぶ。今回紹介するPrimpinも、まさにアフリカ音楽に現代的な要素を盛り込んだ作品と言えるだろう。

ド頭からドラムとベースが絡み合ったリズムが鳴り響き、(ドラムはおそらくドラムマシンの打ち込み)既にこの時点で体が勝手に動いてしまうようなグルーヴを感じるだろう。その後ホーンやパッド系のシンセなども加わり、そこからサリフのヴォーカルとコーラスが入ることで曲のダイナミックさが増していく。陽気なアフロなリズムとエレクトロが奏でる音は聴いていてとても心地が良い。

サリフは1984年に活動の拠点をフランス・パリに移しているが、その事によりジタル技術や電子楽器からの影響がみてとれる。時代は1973年にYMAHA DX7が登場し、デジタルシンセをハンコックやスティービー・ワンダーなど様々なアーティストが使用していた。デジタルサウンドの隆盛期だ。

そんな中でサリフもエレクトロな表現に進むことになるが、そのおかげで伝統的なアフリカ音楽と現代的なサウンドが見事融合した独自の音楽は、アフリカ以外でも人気を博し、サリフ自身世界で活躍するアーティストとなった。

しかし、69歳と高齢になってしまい、実は今回のアルバムがラストアルバムになるのではないかという噂も立っている。終わると聞いてありがたがるのもどうかと思うが、この機会に彼が切り開いていったアフリカと世界を繋いだ音楽に、もっと触れてみたいと強く思った。

DISC INFO

Song : A-1 / Primpin

Album :Primpin

Artist : Salif Keita

Year : 1989

Label : Mango ‎– 12 MNG 103

Country : UK

Discogs : https://www.discogs.com/ja/Salif-Keita-Primpin/release/5003520