このブログもそうなんですが、基本写真は愛機 SONY α7S +Zeiss FE24-70mm F4で撮影しています。イヤッ、正直iPhone(6 Plus)の方が多いですね。なんやかんやいうて。それをVSCOのアプリで加工するのがいつものパターンですね。(ホントVSCOは優秀で、プリセットのみでも全然雰囲気ある写真が撮れます。)
このWEBの時代ではiPhoneでも十分キレイに撮れるし、α7Sなんて画素数抑えめだけど超高感度センサーのお陰で階調豊かで馬鹿みたいに美しい写真が撮れます。
しかししかし、自分の好きなアナログ・レコードもそうなんですが、やっぱりどんなに加工(フィルター)ができてもそこから醸し出されるアナログの雰囲気っていうのは間違いなく存在しているんですよね。
例えば私も好きな写真家の梅佳代さんとか、川島小鳥さんの作品なんかはやっぱりフィルムじゃないと成立しない感じはあると思います。
カメラ選び
てな感じでアナログ感や粒子感を味わいたくなり、久々にフィルムカメラで撮ってみようと思っていたんですが、自分の持っているカメラが親父の使っていた「PETRI」(ペトリ)の一眼レフ…。
おじさん(おじいちゃん?)カメラファンなら泣いて懐かしがるメーカーで、昔お金が無くてNikonのカメラが買えなかった青少年たちが、”Nikonと同じ機能で半額”のペトリをこぞって使っていたようです。うちの親父もそのクチで、若い時に買ってその後実家に放置してあったカメラを自分が発掘。それを10年前くらいに露出の合わせ方も良くわからないまま使っていました。白黒で撮っていたんですが、意外にも雰囲気が良くて綺麗に撮れていたのを覚えています。おそらくそういうところもフィルムの良さなんでしょうね。
私が使っていたのも既に10年前なんで、カメラはサビつきレンズにはカビがあって使えたもんじゃない。ということでおなじみのヤフオクでフィルムカメラを物色してみました。探す条件がスナップでサクサク使いたかったので、小さく持ち運びやすいことと、マニュアルフォーカスもかったるかったのでAFがついたコンパクトカメラで探してみました。
第一候補はやはりZeiss Sonnar搭載の高級コンパクトカメラの走り、「Contax T2」ですね。先述のアナログレコード然り、アナログ回帰の波がカメラ界にも押し寄せているようで、巷ではにわかに銀塩ブームが起きているみたいです。その中でもこのT2が使いやすさや、やはりZeissレンズの描写力で人気のようで、意外とまだ高値で取引されてますね。
第二候補は以前デジタルで私も使っていた「RICOH GR1(シリーズ)」です。デザインもミニマルでバリかっこいいです。銘玉と呼ばれるGRレンズを搭載したGRシリーズはGR1、GR1s、GR10、GR21とアップデートされているんですが、スナップのためのカメラと言っても過言じゃないですよね。ただGR1やGR1sあたりはやはり高値で弾数が少ないです。GR10やGR21あたりで探すと安価な中古品もあるんですが、状態の良いものが少ないですねぇ。
第三候補は「MINOLTA TC-1」や「NIKON 35ti」あたりですが、シンプルに高いし少ない!
こうなったら「CONTAX Tvs」だ!Zeiss Vario Sonnarが乗っていて、ズームだし使いやすいし、何より数も多いし安価!と思ったんですけど、T2から流れてきた人たちが多いんでしょうね。この状態でもこんなに入札が?っていう物が多くてここで争うのか…と思ったら気が進まない。
KYOCERA TDとの出会い
なんだよもうっ!とプリプリしながら探していたらZeiss Tessarの文字が。
2台で¥3,000
の価格にエッ!って思って確認してみたら、片方が「KYOCERA TD」というカメラではありませんか。聞いた事なかったんですが、調べてみるとどうやらZeissレンズ搭載の「ヤシカ Tシリーズ」のひとつで1986年に発売。「京セラ」が「ヤシカ」を吸収合併後のTシリーズで、初めて京セラの名前で販売されたカメラです。そして全く同じ製品でヤシカブランドからも「YASHICA T2(D)」という名前で販売されていて、以後はTシリーズ全て「京セラ Tシリーズ」として統一されています。(海外向けはヤシカブランドのまま) このTシリーズも「KYOCERA T-PROOF」や「KYOCERA T-ZOOM」は未だ根強い人気があるみたいですね。
そんなKYOCERA TDですが、動作未確認ジャンクとしてペンタックスの「PENTAX ZOOM 60-X」とこれまた聞いたこと無いカメラとセットで¥3,000で出品されていました。
まあ中途半端なお金で中途半端な状態のものを買うより、1台¥1,500で壊れてても割り切れる値段だし、こんなレンズを自作しているジーニアスもいるので最悪動かなければレンズだけ流用しようと思い入札してみました。そしたらあっさり¥3,000で落札。届いたものを確認したら、
まぁーーーーー綺麗!
文字のかすれなどは多少ありましたが、あまり使っていない状態で保管されていたんでしょうかね?肝心の動作は?と思ってリチウム電池とボタン電池を交換してみると、普通に動く!淀み無く動く!ファインダー内表示や、フラッシュ、フィルム送りや自動巻き上げも問題ありませんでした。
中央には「Carl Zeiss Tessar 3.5/35 T*」の文字が。ツァイス・テッサー 通称”鷹の目”
リチウム電池は「2CR5 6V」左底面に蓋があってマイナスネジで閉めてある
蓋裏にDATE用にボタン電池「CR2025 3V」
KYOCERA TDの使用感
このKYOCERA TDはコンパクトカメラと言うのを躊躇してしまうくらいなかなかの図体してます。プラボディで高級感はあまりないんですが、当時の定価はTシリーズ最高額の¥52,700もしたようです!お高いのね!
撮影モードも何もありません。覗いてシャッターを切る。それだけです。
特徴的なのが、暗い所にでシャッターを切るとストロボが自動発光する仕組みなんですが、結構焚いちゃいます。あれーここそんな暗くないのになーって所でも。そんな時スイッチで解除できれば良いんですけど、これは「NO FLASH」って書いている強制発光解除ボタンを”押しながら”シャッターを切らなければならないんです。その逆に明るいところでもストロボ焚きたい時は「DRY LIGHT FLASH」と書いている強制発光ボタンを押しながらになります。これが天面部の左側(シャッターの反対側)に付いているんですが、左手でボタンを押しながらなので片手でシャッター切れないところがなかなか煩わしいです。しかも強制発光ボタンが隣接してあるので間違ってそっちを押しちゃうことも何度かありましたね。
右にシャッター、電源スイッチ、タイマー、カウンター。左にNO FLASHとDRY LIGHT FLASHボタン
そして写真では開いているのですが、半透明の黒いオートレンズバリアが付いていて、普段は閉じていてシャッターを切ると開いてまたすぐ閉じる機構になっています。その時に「ガチャ、ンーーーッ」ってなかなか大きいメカな音がするんですよ。コロッケがロボ五木する時みたいな音が。なので静かな所だと結構周りから蔑んだ目で見られます。
フォーカスポイントなんですが、シャッター半押しでファインダーを覗くと下の方に、人のアイコン(近距離)、人が2人のアイコン(中距離)、山のアイコン(遠距離)が表示されて、このざっくり3段階で距離を判別します。ただこのフォーカスが
まぁーーーーー合わない!
1986年発売なので、これが当時の技術的な限界なんでしょうね。遠景の風景は何も考えずシャッター切れば良いんですが、近、中距離はなんとなくフォーカス合っているカットは5割あれば良い感じですね。
色々と文句を言ってみたんですが、30年前のカメラを¥1,500で買っておいてうるせーよって感じなので良いところを書いておくと、やっぱりこのカメラ最大の特徴であるレンズ「ツァイス・テッサー」 通称”鷹の目”ですかね。フォーカスはなかなか合わないんですけど、合った時はなかなか良い色ノリと鋭い描写とをしてくれます。そしてT*コーティングの恩恵で逆光環境でも階調性を保ってくれています。このあたりは安いそこら辺のコンパクトカメラには無い描写力ですね。
撮影例
先日伊豆旅行に行きまして、その時このカメラを持っていったので撮影した何枚か載せます。
(写真のチョイスは謎ですが)全てフィルムを「フジカラー SUPERIA X-TRA 400(amazonで一番安いんでいつもこれです)」で撮影し、現像後はフラットベッドスキャナ「EPSON GT-X770」でスキャンしたものをPhotoshopで軽く補正しています。
彩度・コントラストを強めにしているんですが、破綻せずにしっかりと描写してくれいていますね。1枚目の背景のボケ味も悪くないですし、最後の雲の切れ間から光が指す写真も、逆光ですがしっかり光の帯を捕らえています。ディティールをじっくり見るとシャッキリしてませんが、スナップカメラとしては上出来なんじゃないでしょうか?
まとめ
はじめに書いたようにiPhoneのカメラでも性能がぐんぐん上がってきて、更にコンバージョンレンズなんかを付けた日にゃ、1インチセンサーのコンデジと遜色ない写真が撮れちゃいます。ただフィルムカメラが持つ独特の空気感はなかなか再現できるものではないです。そして今回はFujiのネガフィルムでしたが、これがKodakだったり、白黒だったり、ポジ(リバーサル)フィルムだったり、組み合わせ次第で仕上がりは全然変わってきます。
なによりフィルムを選んだり、現像やプリントを待つ時間、仕上がりをわくわくしながら想像する行為全て含めて“写真的体験”なんだと思います。
今回はKYOCERA TDという三振、当たればホームランっていう近鉄のブライアントみたいなカメラを使ってみましたが、まだまだ銀塩カメラの世界は奥深そうなので、これからも素敵な写真的体験を求め、色々と試行錯誤しながらカメラ・ライフを楽しみたいと思います。