今は空前の観葉植物ブームですね。いや、言い過ぎました。空前のブームってドラクエ3とかWindows95とかたまごっちとかですよね。(若い人はわからないか)
でも本当に植物はブームのようですね。インテリアショップやファッションのセレクトショップでも新業態として植物を扱うお店は増えたと思います。例えばそのブームを牽引している人気種の一つが塊根植物の「パキポディウム・グラキリス」(以下グラキリス)です。塊根植物の魅力は以前このブログにも書かせてもらいました。
植物の価格
グラキリスはぽってりしたフォルムと、ダルダルしたシワが植物なのになんとなく動物っぽくてカワイイと大人気です。お店で買うと小さい株で約2〜3万円、幅が10cm超えるような中くらいの株で4〜5万円、大きい株になると10万円を超えるものもあります。興味が無い人なら「はぁ!?植物に2万円!?」と声のボリュームおかしくなっちゃいそうですよね。
なぜ植物なのに高いのかっていうと、この変わった姿形のグラキリス、ご想像の通り日本には生えてません。お店で売られているグラキリスの殆どが”現地球(げんちきゅう※現地で採取した株のこと。株のことを球とも呼ぶ為。)”と呼ばれている、故郷マダガスカルからはるばる日本にやってきたものです。そして植物を日本に持ち込む際厳しい規制がかけられていて、簡単に「はい、どーぞ」と輸入できないんです。
こういった植物が輸入されてくる場合基本的には土が全て取り払われた”抜き苗”で運ばれてきます。鉢植えのまま輸入できれば良いんですけど、先述の植物の輸入規制で、土に付いた菌や虫などを日本に入って来ないように水際で防いでいます。
じゃあ土が取り払われて根が露出した状態で運んでくるんだから、赤子のようにデリケートに扱われるているかというと、そんななことはなく雑ぅーに扱われています。
グラキリスは生育環境が過酷な岩上や絶壁にがっしりしがみついて生きているのでその殆どが”山採り”と呼ばれる自然に生えているのを採ってきたものです。(管理農園で育ったものもあります)それを現地の人が掘り出して、根をバッツンバッツン切って、梱包もかさばると送料かかりますから枝もバッツンバッツン切っちゃいます。それを布とか紙でグルグル巻きのゴロンって感じでパッキングして送ってきます。
なので日本に着いた時にはまさに瀕死状態。体内に蓄えたエネルギーだけでかろうじて生きている状態です。そのヘロヘロの状態の植物を素人が買ってきて、育てられるか?というと十中八九死にます。なので農家さんが輸入した苗を一定期間(早くて半年、長くて2〜3年)管理してから販売されます。しかも管理中でも例えば変なウィルスとかに侵されている株で枯れてしまうこともありますからね。
そういったリスクを背負いながら農家さんは輸入するので、私たちの手に届くまでどうしても値段は高くなってしまいます。末端価格というやつです。今はブームで需要も増え、マダガスカルの情勢も変化し入ってくる量も増えてきて、昔に比べたら価格もこなれてきていますがやはりまだお高いです。
そういう輸入株を購入する時に大事なキーワードが”発根済み”かどうかです。
根っこが大事
サボテンや多肉やコーデックスは体内に水分や養分など生きる為のエネルギーを蓄えますから鉢植えにしておくと初めの内は葉を茂らせたりするんですけど、それはあくまで蓄えたエネルギーで使っているだけで、基本は根から水や養分を吸収するので新たな根が出ているかどうかでこれから生きていけるかどうかが決まってきます。
なのでちょっと安めの価格で”未発根”の苗が売っていたりするんですが、育てていてもしっかり根が張るまで枯らしてしまう可能性が高いので、育てるのに自信がない方は若干値が張っても”発根済み”のものを購入する方が安心です。
ただ本当の一部、ほとんどの業者さんは違いますが、根っこは外から見えませんから発根済みと謳っているのに実は未発根の株を掴まされることもあります。確かに業者さんにとって発根済み、未発根の境界線は難しいのは理解できますが、購入する側はできるだけ信頼できる業者やお店で購入するのが良いです。
やっと本題
それでも農家さんいわくコーデックス現地球は最初良くても3年くらいしたら具合悪くなって枯らしちゃう事は全然あるみたいですね。買おうと思ったら高いし、栽培のプロでもこんなことになっちゃうって俺達はどうすりゃいいんだぁぁぁ!うわぁぁぁ!!って発狂しちゃいますよね。そんなことを調べてたら、どうやらパキポディウムなどのコーデックスの種を買って、種から栽培している方々が結構いるらしい。
種から植物を育てる事を“実生 (みしょう)“と言います。
立派な株に育つまでにはかなりの時間がかかりますが、なんとなく植物栽培の醍醐味みたいなものを感じたんですよね。それでじゃあおいどんも実生をやってみようと思いたったのが始めたきっかけです。
実生のメリット・デメリット
そこで実生のメリット、デメリットをまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
品種にもよるが20粒¥1,000程で購入できるので、費用を抑えられる | 販売されている現地球のような株に育つまで相当な時間が掛かる |
幼苗から現在の環境で育てる為、輸入株よりも環境に適応しやすい | 自生地の環境とかけ離れている場合、思ったような株姿にするのが難しい |
メリットは何と言っても費用を安くすることができるっていうことです。そして輸入した株を自生地の環境とかけ離れた日本で育てるより、種から発芽した、いわば赤ちゃんから育てる方が現在の環境に順応しやすいです。例えば”難物(なんぶつ)”と呼ばれる栽培が難しい品種も実生から育てる方が長く栽培できる可能性は高くなります。
一方デメリット(と言って良いかわかりませんが)は売られているような姿にするまで結構な時間と覚悟が必要です。先述のグラキリスも実生から立派な姿になるまで7〜8年は掛かると思います。アガベの成長が遅い品種だと大株になるまで20年以上かかる場合もあります。
そして植物は自生する環境に適応するために姿形を変化させているので、全ての形に理由があります。グラキリスなどは雨少なくて乾燥してる、強烈な日差し、岩の絶壁、風も強いみたいなエグい環境に適応するためにあの形なので、夏は湿度高くて冬寒い、日差しもそこそこ雨は結構降るような日本だと、現地球のようなぷっくり太い株にするのが難しいです。
そういったメリット・デメリットはありますが、そんなにお金も出せないし、種から育てたほうが愛着や感動もひとしおと思い私も実生を始めてみました。今はコーデックスだとパキポディウム数種類、アデニウム、ユーフォルビア数種類、その他にもガガイモ、トックリラン、アガベ数種類などなどを実生で育ててます。
大変申し訳ありませんが前置きが長くなってしまいました…。いつもの悪い癖。長くなってしまったので次回は実際種を苗床に蒔くまでの方法を解説したいと思います。
追記
続き書きました。今回も長ーーいです…。
できたての最新記事アツアツのままどうぞ